Minoltaのオールドレンズ「MC ROKKOR-PF 50mm f1.7」のレビューをお届けします。オールドレンズというと、PentaxのSuper Takumar 55mm f1.8やHelios 44-2 58mm f2.0が有名ですが、このMC ROKKORも「緑のロッコール」として知られています。1966年発売で40年以上前に作られたレンズで、六甲山にちなんで「ロッコール」と名付けられたそうです。古き良きダジャレ由来のネーミングに「ダジャレかい?!」と突っ込みたくなりますが、特に植物を撮影したときの写りは真面目に現行レンズを凌駕する部分があります。早速、作例をご覧ください。
(Photography & Text : crakaf)
ホテルメッツ渋谷の朝食です。渋谷に泊まるときは、ここの朝食が絶品です。MC ROKKORは「緑のロッコール」と言われますが、葉物の緑が美しく撮影できます。意外に思えたのはニンジンのオレンジやオレンジジュースの黄色が映えること。F1.7の明るさは、開放撮影でピントも合焦しつつ、背景が嫌みなく自然にボケてくれます。Helios 44-2 f2.0のぐるぐるボケや、Super Takumar F1.8のボケも綺麗ですが、MC ROKKORの自然な表現も好感が持てます。
MC ROKKORと言えば「緑のロッコール」。自宅で実生から育てているパキポディウム・グラキリス(Pachypodium gracilius)たちです。トゲトゲにピントが合っていますが、前後の葉が溶けるようにボケてゆきます。他の鉢に付いた水滴が作る玉ボケも綺麗です。植物は土を扱うので写真が綺麗に撮れないことが多いのですが、α6400+50mm(換算75mm)+f1.7の組み合わせは、主題となる植物をフォーカスしつつ、前後のボケで画面を整理することができます。MC ROKKOR 50mm f1.7とAPSC機との組み合わせは植物撮影にもおすすめです。
この日は散策して回り、渋谷のMUJIカフェで一休みして、コーヒーとプリンをお願いしました。プリンはしっとり甘くて疲れがとれますね。MC ROKKOR-PF 50mm f1.7はテーブルフォトにも使えます。程よい周辺減光が被写体を浮かび上がらせてくれます。コーヒーの水面が照明を反射してできる玉ボケもバブルのような輪郭がはっきりして印象的です。
こちらは下北沢の駅からの通りです。ひっそりとした小道が下北沢駅から整備され、素敵なカフェや飲食店が軒を並べています。夕方になって家路を急ぐ人、子どもたちと公園で遊ぶ人、カフェでくつろぐ人と、まるで昭和のような景色が現代的でおしゃれな空間に広がっています。植え込みのシンボルツリーが写り込むと、MC ROKKORには格好の被写体です。
下北沢のLIGHTUP COFFEEさんに寄ってティーパックを購入し、お願いして外観を撮らせていただきました。住宅地にたたずむ焙煎コヒー店の周辺には、路地を曲がる前から香ばしい焙煎の香りが漂います。軒下で親子ずれがコーヒーで一服されていました。MC ROKKORは白熱電球のような暖色系の明かりも柔らかく表現してくれます。帰り道にこんな焙煎店があったら毎日ほっとできますね。
わが家の「いも」こと「亀甲竜(Discorea elephantipes)」の実生株も撮影しました。焦点工房のアダプター「SHOTEN マウントアダプター LM-SE M (L)+5mm」を間に挟みました。これは+5mmのヘリコイドでレンズを繰り出して、最短撮影距離を縮めることができます。ここまで寄ると背景も溶けて、被写体を浮き立たせてくれます。MC ROKKORは本当に植物を美しく表現してくれます。
前回、前々回に紹介したSuper TakumarやHeliosはM42マウントですが、ROKKORはMDマウントです。Sonyのαシリーズで使用する場合は、「MD→Eマウント」のマウントアダプターを間に設置するか「MD→L/M」+「L/M+Eマウント」のマウントアダプターを2つ付けて撮影します。今回はライカMマウントのレンズを+5mmのヘリコイドで繰り出して、もうすこし「寄る」ことができるSHOTENの「SHOTEN L. M-S. E MACRO(L)」を使いたかったので「MC ROKKOR」→「K&F MD/LM」→「SHOTEN L. M-S. E MACRO(L)」→「α6400」で接続しています。
MC ROKKORでも植物育成LEDライトを撮影しました。ROKKORに特徴的なボケは期待していなかったのですが、条件によっては「バブルボケ」が出せるかもしれません。光源やイルミネーションを背景に撮影する際などのご参考にしていただければと思います。
Helios 44では「ぐるぐるボケ」、Super Takumarでは光源をいれたときに「虹色ゴースト」がでましたが、MC ROKKORではどうでしょうか。ご覧の通り、うっすらと虹色のゴーストがでました。とはいえ、本格的な虹色ゴーストを期待するなら、やはりSuper Takumarでしょう。それでも幻想的なゴーストも出せるMC ROKKOR 50mm f1.7は、いわばオールラウンダーです。
植物を撮影する方には断然おすすめのオールラウンダー
MC ROKKOR-PF 50mm f1.7は中古品のため価格は4000円台から6千円台で購入できます。被写体、特に植物はしっかりと印象的に解像し、背景は自然にとけてゆく。緑や暖色が得意なため風景も美しく撮影でき、光源が入ればボブルボケも楽しめる。テーブルフォトや街角スナップも柔らかく印象的に切り取ることができる。この価格でこの表現が手に入るのであれば、購入してみる価値はあるのではないでしょうか。APSC機の「α6400」とのセットで35mm換算75mmの中望遠で撮影できる「MC ROKKOR-PF 50mm f1.7」は、植物を撮影する方には断然おすすめできる魅力的なレンズです。